会社設立準備ノートの目次
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申請用総合ソフトによる申請の仕方
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融資について
バーチャルオフィスを利用する場合
バーチャルオフィスの有効な利用方法について
下記の記事でも書いた通り、登記の際に本店住所としてバーチャルオフィスの住所を記載することは止めたほうが良さそうです。
バーチャルオフィスのプランにもよると思いますが、下記のようなケースが概ねバーチャルオフィスを利用するメリットと考えられます。
- 自宅では来客対応ができない場合のレンタル会議室(会議スペース)
- 会社としての電話番号やFAX番号を利用したい
- 公開情報とはいえ、業務上の住所として自宅住所を晒したくない場合に郵便物の受け取りや転送をしてもらう
会社登記時の住所について
登記時の住所について
定款に記載する本店所在地と違って、登記事項の住所は建物名までの厳密な住所です。
本店を移転し、登記されている住所が変更になった場合には、移転日から2週間以内に登記事項の変更申請が必要になります。
その際、法務局の管轄が同じ住所への移転の場合は、登録免許税3万円、違う管轄への移転の場合は、管轄ごとに登録免許税が必要なため、6万円が費用として必要になります。
また、登記事項同様、定款でも全ての住所を記載していた場合は定款の変更も必要になりますが、その際に定款の再認証は不要です。あくまで登記事項の変更のみです。
自宅かバーチャルオフィスか
当初は小さな会社からスタートしますので、最初から会社専用の事務所を借りることは考えません。自宅を事務所とするか、バーチャルオフィスを利用することに限定して考えてみます。
自宅の場合、登記事項に記載されるため、自宅住所が公開されるということでちょっと抵抗がありますが、登記事項には「代表者の氏名および住所」も記載する必要があり、結局のところ自分の自宅住所は公開することになります。
上記の点を気にしてバーチャルオフィスを、という発想もありますが、バーチャルオフィスの場合、登記後の銀行口座の開設時に問題視され、口座開設ができない可能性もあるようです。
以上の点から、自宅住所が公開されることは承知の上で、バーチャルオフィスではなく、自宅住所を本店住所として登記するのが良さそうです。
自宅を事務所として設立する場合
メリット
自宅は持ち家ではなく、賃貸の場合について考えます。
- 住居と別に事務所を借りると当然追加で賃料が発生するが、自宅兼ならそれが無い。
- 家賃を会社の経費とすることができるため、自分個人の給与から支払う家賃が減るため、結果として手元に残る金額が増える。
家賃を経費とするメリットについて
(例)
- 家賃:10万(月)
- 会社の売り上げ:100万(月)
- 会社の経費:20万(月)
上記の場合、80万が利益で、税率20%とすると、手元に残るのは、
80 - 80 × 0.2 = 64万
この額を丸々自分の給与とすると、ここから家賃を引くので、手元に残るのは、
64 - 10 = 54万
ここで、10万円のうち、5万円を事務所として経費にすると、経費が5万円増えて、経費は25万ですので、手元に残るのは、
75 - 75 × 0.2 = 60万
会社としての利益は減りましたので、自分の給与も減ってしまいましたが、支払うべき家賃は残り5万なので、
60 - 5 = 55万
となって、1万円多く手元に残りました。
デメリット
- 賃貸契約上、事務所とはできない可能性があるため、大家さんや管理会社に確認する必要がある。
- 自宅では来客の対応などが難しくなるため、会社の規模が大きくなるにつれ、実質的に企業活動に支障が出る。
電子定款の作成
電子定款とは?
必要なもの
- PDF文書作成と電子署名のためにAdobe Acrobat(およびプラグイン)が必要。
- 電子署名のためにマイナンバーカード(または住民基本台帳カード)が必要。
- マイナンバーカードの電子署名を読み取るためのICカードリーダーが必要。
- オンライン申請は「登記ねっと」からダウンロードできる申請用総合ソフトを利用する。
- 申請の前に公証役場でのチェックを受ける必要がある。
公証役場での事前チェックについて
定款認証前に、事前に公証役場で定款の形式や必須項目に問題がないかチェックをしてもらえるそうです。そのため、オンライン申請の前に近くの公証役場に電話で確認を取ります。
とてもナンセンスに思えるのですが、電子定款であっても、公証役場へ定款の内容をファックスで送信するのが一般的なようです。(もしかすると公証役場によっては、メールでファイルを送信でも可能かもしれませんが)
各種リンク
定款の内容について
定款の記載事項
大きく下記の3つあります。
- 絶対的記載事項
- 相対的記載事項
- 任意的記載事項
絶対的記載事項について
絶対的記載事項は、会社法27条によって以下のように定められている内容です。
株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
一 目的
二 商号
三 本店の所在地
四 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
五 発起人の氏名又は名称及び住所
目的について
- 将来的に行う可能性のある事業について全て記載することが望ましい。
- 「前各号に付帯関連する一切の事業」と最後に記載することで、広くカバーできるようにすると良い。
- 記載されていない事業を行っても罰則などはないが、会社の利害関係者(株主など)から、その事業について無効であると申し立てられた場合などに、事業が継続できなくなる可能性がある。
商号について
- 「株式会社」または、「合同会社」という文字を含めることが必須。
本店所在地について
- 最小行政区画(東京なら区)までの記載でOK。
- 住所全てを記載した場合、移転するたびに定款の変更が必要になり、手続きや費用が掛かる。
- 最小行政区画までにしておくことで、例えば同じ区内での移転であれば定款に手を加える必要がない。
設立に際して出資される財産の価額又はその最低額について
- 資本金のこと
発起人の氏名又は名称及び住所について
- 発起人(自分個人)の氏名・住所を記載する。
- 本店所在地と違い、住所を全て記載する必要あり。
- 発起人が会社の場合は会社の住所。
- 印鑑証明書を提出する場合は、記載内容が同じである必要がある。(電子定款でも印鑑証明書が必要かどうかは確認中)
発行可能株式総数
- 会社法における絶対的記載事項ではないが、株式会社の場合には定款に記載しておく必要のある項目。
- 資本金と1株の価格(例えば1万円)から計算される発行株式数の10倍程度を目安としておく(例:資本金100万円、1株1万円の場合、発行株式数が100株なので、1000株に設定)。
- ただし、公開会社の場合は4倍まで(上記の例だと400株)。
- ちなみに「公開会社」とは「上場会社」とは別で、定款で株式譲渡制限を定めている場合は「非公開会社」、定めていない(株式譲渡が自由)場合は「公開会社」となる。
- 会社法により、公開会社には取締役会の設置(3人以上)が必須のため、一人で設立した場合には、非公開会社しかできない。
相対的記載事項について
定款に定めておかなければ有効にならない事項です。記載内容が会社によって違うというだけで、基本的には必須事項と考えた方が良さそうです。主な記載内容は下記のようなものがあります。
- 現物出資
- 株式の譲渡制限に関する定め
- 株券発行の定め(株券は発行しなくても良く、発行する場合は定款で定める必要がある)
- 役員の任期の伸長
ただし、合同会社の場合は「現物出資」以外は必要な項目は無いようです。
任意的記載事項について
書いても書かなくても、特に影響は無いものの、会社として決めておきたいような事柄を記載します。例えば・・・。
- 事業年度
- 商号の英語表記
会社用の印鑑について
会社用の3種類の印鑑について
一般的に、会社用の印鑑としては、以下の3種類を作成し、使い分けるようです。
- 代表者印(実印)
- 銀行印
- 角印
代表者印
最も重要なのが代表者印で、登記後に発行してもらう印鑑カードもこの代表者印を登録します。
つまり、法的に効力を持つ印鑑で、対外的な契約書など、会社としての重要な書類に利用される印です。
銀行印
銀行印はその名の通り、銀行口座開設で利用する届出印として利用されるものです。その他、口座引落用の書類などにも利用されるようです。
角印
角印は会社印とも言われ、主に社内の書類などに押す認印として利用されるものだそうです。従って、法的な効力が必要な重要文書には利用しません。
「角印」という名称は、形状が四角であることから来るようで、対照的に代表者印は「丸印」と呼ばれるようです。
印鑑の文字について
代表者印と銀行印は丸い形で、円周に会社名を、内側の円内に「代表取締役印」や「銀行之印」などとするのが一般的なようです。
角印は会社名のみを彫ります。一般的には縦書きに記載するようですが、横書きでも問題ないそうです。また、現在はアルファベットでも良いとのことです。
使い分けについて
実際のところ、銀行印はなくても、代表者印で全てをまかなえるそうですが、一般的には紛失や悪用のリスクヘッジの観点から用途を分けて用意されるようです。
会社用の銀行口座開設
会社名義の銀行口座を作るには
会社名義の銀行口座を作るためには、当然のことながら会社が存在していなければいけないので、まず会社を登記することが先になります。
最初は、じゃあ会社を作るときの資本金はどこに振り込むのか?と疑問に思う方も多いと思いますが、この時点で資本金を証明するための銀行口座は、自分個人が保有する口座で構わないということです。
- 自分の銀行口座に資本金払込
- 会社の銀行口座を開設
- 会社の銀行口座に資本金を移動
法人口座開設に必要な書類等
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
- 定款(コピー)
- 届出印とする印鑑(会社の銀行印)
- 会社の代表者印と印鑑証明書
- 身分証明書(届出する本人)
口座開設時の注意点
最近は銀行口座の開設の審査が厳しくなっているため、下記のような点に注意する必要があるようです。
- 資本金(多寡だけでなく、その金額の適性も説明できるかなど)
- 最寄りの店舗か(登記上の住所の最寄り店舗で開設が望ましい)
- 会社の実態(事業目的や状況の説明)
ネット銀行の場合、比較的審査が通りやすいという話もあるようですが、結局のところ会社としての実態に問題がないか、ということがポイントだと思われます。